看護師が知っておきたい止血のしくみ

止血のしくみ

「止血」は、生体にとって不可欠な機構です。

 

止血は、血小板や凝固因子が相互に作用しながら協調し、実現します。

 

このシステムの全貌はとても複雑なものです。

 

近年では、生理的な凝固反応は
主に外因系によるものであることが明らかになっています。

 

そして、様々な相互作用の上に、止血のシステムは成り立っていることが分っていて、
臨床検査も、生体での凝固反応を完全には再現していないという点に注意していくことが必要です。

 

 

 

(1) 血小板の粘着と凝集

 

止血の第一段階は、「血小板の粘着と凝集」、
そして、止血の大二段階は、「凝固因子によるフィブリン形成」です。

 

血管内皮が損傷し、出血の危機が訪れると、
まず、血小板が損傷部位に粘着します。

 

つまり、血小板は、損傷部位を見つけ、
その部分粘着するのです。

 

では、なぜ普段は血小板は血管の内壁に粘着することがないのでしょうか。

 

血小板と血管内皮は、どちらも表面にマイナスの電気を帯びています。
ほかに引き合う原因がなければ電気的に反発し合います。
このことによって、血小板同士、或いは血小板と血管内皮細胞との結合を妨げています。

 

また、血管内皮膚細胞が、血小板の働きを抑制する物質を産生するなどして、
不必要な粘着を防いでいます。

 

ですが、ひとたび血管内皮が損傷し、
内皮下層にある結合組織(主なものとしてはコラーゲン)が露出すると、
その部分に粘着の邪魔をするものがなくなる為、
粘着が促されます。

 

さらには、血漿中にはコラーゲンと血小板との結合の橋渡しをする物質
(ヴォン・ヴィレブランド因子(vW因子))が存在していて、
このヴォン・ヴィレブランド因子(vW因子)によって粘着が促されます。

 

粘着の次に起こるのは、「凝集」です。

 

凝集は、損傷部位で血小板同士がさらに集まるもので、
ヴォン・ヴィレブランド因子(vW因子)を初めとした物質が、
血小板同士の接着剤として働くことによって起こります。

 

ですが、損傷部位以外の場所では、この凝集は起こりませ。

 

粘着した血小板は、単にその部分にとどまることだけでなく、
様々な変化を起こして形態を変え、高い凝集能力をもった状態へと「活性化」されます。

 

ですから、活性化された血小板のいる損傷部位には、
他の血小板がどんどん結合し、血栓を形成します。

 

(2) 凝固因子によるフィブリン形成

 

「凝固因子によるフィブリン形成」は、
「血小板の粘着と凝集」による止血の第一段階に続く、
止血の第二段階です。

 

第二段階は、血栓に繊維を絡み付けて強固なものとする過程です。

 

この繊維を形成する物質をフィブリンと呼び、
これを最終的に産生するために、血漿中の様々な物質が働きます。

 

これらの物質を「凝固因子」といい、発見順に番号がついています。

 

ひとたび凝固系の引き金が引かれると、
まるで滝(cascade)が流れ落ちるように、
下流の反応が増幅され、フィブリン形成に至ります。
このような反応を起こすことから、
一連の反応は、「凝固カスケード」と呼ばれます。

 

凝固カスケードの上流は、2つに別れていますが、
伝統的に、「内因系」と「外因系」とわけ、
合流した後を「共通系」と呼んでいます。

 

内因系も外因系も、その出発点、すなわち凝固が開始されるきっかけがあるはずなので、
その部分を理解することが重要です。

 

中でも、外因系の出発点となる物質である「組織因子」が特に重要です。

 

凝固因子は、血漿中に含まれていますが、
組織因子だけは血管外の組織である血管内皮の平滑筋細胞などから供給される物質です。
だからこそ、外因系という名称がついています。

 

血管が損傷すると、組織因子が血漿に侵入し、
凝固系の引き金を引き、速やかにフィブリン形成をもたらします。

 

内因系反応は、硝子などの異物に接触することによっても起こり、
「試験管で再現できる凝固反応」としてよく知られています。

 

このため、生体に置いても、外因系とともに、
凝固カスケードの重要な一端を担うと考えられてきました。

 

ですが、近年では、生理的な凝固反応は
主に外因系によるものであることが明らかになっています。
また、PTやAPTTといった臨床検査も、
生体での凝固反応を完全には再現していないという点に注意しなければなりません。

 

このように、止血に不可欠な血栓の形成は、
止血の第一段階の「血小板の粘着と凝集」、
止血の大二段階の「凝固因子によるフィブリン形成」というように、
大きく2段階に分けて考えることが通例です。

 

しかし、これらは明確に分離されたステージとして起こるものではありません。

 

リン脂質のように、凝固カスケードを進行させるための物質を血小板が供給したり、
逆に凝固因子の中にも血小板を活性化させる作用を持つものもあります。

 

止血のシステムはとても複雑であり、
様々な相互作用の上に、成り立っているのです。